夜勤や休日に仕事をしていると、妊婦さんからの電話に助産師が直接対応しなければならない時がありますよね。
助産師は、目の前にママがいるわけではないので、ママが話す内容や、聞こえてくる声音、息づかいなど、耳から得られる情報だけで様々なことを判断し、的確な指示を伝える必要があります。
ですが、新人のうちから完璧な電話対応なんてできません。
私も新人の頃は特に、責任の重さから電話対応をすることに苦手意識がありました。
というか、臨床で助産師をして十数年経つ今でも、「この電話対応でよかったのか…」「これも伝えればよかったかな…」などと、反省することも少なくありません。
しかし、絶対に聞き逃してはいけないポイントを押さえておくだけで、ママとベビーがより安全に行動するための判断を誤ることはありません。
今回は、
- 妊婦さんからの電話対応に不安がある
- 電話で何を聞けばいいのかわからない
- ベテラン助産師が電話対応で意識していることを知りたい
- 電話対応で聞き逃してはいけないポイントが知りたい
という若手の助産師さんや、これから助産師になるという学生さんに向けて、私の電話対応の心得をご紹介します。
このステップを踏めば電話対応には困らないという内容になっていますのでぜひ参考にしてください。
1. ママ本人と話すこと
ママのことを心配してご家族が代わりに電話をかけてこられることも多いですが、可能であればママご本人と直接話をしましょう。
どのように痛いか、いつからその状況なのかなど、ママにしかわからない情報は、直接か聞くのが一番スムーズで正確な情報だからです。
ママが電話に出られないほどの緊急時は、必要最低限の情報を聞き、すぐに来院を促す必要がありますし、ほとんどの場合は電話を代われることが多いです。
2. 緊急性を判断する
まず、電話口から聞こえる声や音、息遣いに注目しましょう。
ママの痛がり方や息遣いから素早く緊急性を判断します。
それらにより陣痛の強度を推測することができますし、ママの余裕のなさや精神状態も感じ取ることができます。
「電話中に痛みがきたら教えてくださいね」と、はじめに伝えておけば、何分おきに陣痛がきているのかも知ることができるのでおすすめです。
そして、痛みがきている時(陣痛発作時)に会話できるレベルなのかも、陣痛強度をアセスメントする上で重要な情報になります。
- 声に変化がなく会話できるのか
- 少し言葉に詰まってしまうのか
- 痛みが声に漏れてしまっているのか
- 力んでしまっていないか
など、陣痛がきているときは特に、電話口の声や音に集中しながら会話をしましょう。
3. 電話を続けていいのか、すぐに来院を促すべきか決定する
2で緊急性の判断をした後は、このまま電話で必要な情報収集をして良いのか、すぐに来院を促した方が良いのか、それとも救急車を呼ぶように促した方が良いのかを決定します。
- ママが異常な痛がり方をしている
- 常位胎盤早期剥離の可能性がある
- すぐに生まれてしまいそう
- 胎動が少ない
などの場合は、長々と電話をするよりもすぐに来院を促し、逼迫している状況であれば救急車を呼ぶことも勧めます。
4. 余裕があればママに聞くこと
3でこのまま電話を続けても良いと判断した場合は、下記の内容を聞き取りしていきます。
その間も、ママの声音や息遣いに注意しながら、話をしていきましょう。
- 名前(フルネーム)、カルテID
- 予定日(その日の妊娠週数)
- 何度目のお産か
- 陣痛が始まった時間、痛みの強さや間隔はどうか
- 破水した時間、今も出ている感じはあるか
- 胎動があるかどうか
- 出血はあるか、量や性状はどうか
- (経産婦の場合)前回の分娩は早かったか
- 病院までどのぐらいで到着できそうか
- 最後の妊婦健診で子宮口が開いているなど言われたか
- 医師から何か言われていることはあるか
- 本人・ご家族の風邪症状の有無
5. 聞き逃してはいけないポイント
ママのとの電話で以下の症状を話された場合は、要注意です。
「たぶん大丈夫だろう」と甘い判断はせずに、迷ったときは先輩や医師に相談し、「もしかしたら危険な状態かもしれない」という判断のもと行動するようにしましょう。
痛みに関して
- 休みなく痛い、ずっと痛い
- 電話中に声もれするほど痛がっている
- 痛い時に力んでいる
出血に関して
- 生理の多い日よりも多い出血
- サラサラした出血
胎動に関して
- 胎動がない、少ない
- 胎動がよくわからない
その他の症状に関して
- 頭痛がする
- 嘔吐、吐き気がある
- 胃が痛い
- 目がチカチカする
- お腹がずっと硬い
まとめ
お産の電話に対応する助産師は、限られた情報からママと赤ちゃんのおかれている状況を予測したり、起こり得る危険性の判断していかなければなりません。
ここでの判断が、その後のママや赤ちゃんの命を救う重要な局面となる場合もあります。
電話対応に慣れない頃は、自分ひとりで判断するのが怖いと感じて当然です。
迷った時、困った時は、先輩に相談しましょう。
後輩の相談に乗るのが先輩の役目ですし、一緒に働いているチームですから。
「自分はこう思うんですけど…」と自分の考えも一緒に相談すると、先輩も親身になって聞いてくれるはずです。
今回の記事が、少しでも現場で働く助産師さんのお役に立てれば幸いです。
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